クリスマスイブイブに「この世界の片隅に」を見てきた

 既に語り尽くされていることだが、太平洋戦争を戦争に疑問を持ったりなどするインテリゲンチャではなく、巻き込まれていってしまう庶民の視点から、淡々と描いていることが、本作のキモ。
 こうの史代氏の筆致を活かし,片渕須直監督によって徹底的なロケハンによって作画された呉や広島の風景は素晴らしく、それだけでも(だけが、魅力ではない!念のため)見る価値はある。
 声高に喧伝するのではなく、事実を描くことによって想起させる方が、効果的に戦争の悲劇を伝えられることを、見事見証明した一作だ。
 これこそが、「真の戦争映画」であると思う。
 
 「あまちゃん」を想起させる、ネイティヴっぽい広島弁なのんさんによるすずさんの演技は、2016年度のアニメーションシーンにおいて、特筆すべきもののひとつであったと思う。
 トラブルなどにより彼女に仕事がない状況でなければ、公開前の「あの扱い」な本作に出演されるようなことはなかっただろう。
 縁というものを感じる。
 そして、その「ワンチャン」をキッチリものにしたのんさんの演技力には、本当に舌を巻かざるを得ない。
 
 クラウドファンディングに参加されたらしい方が応援活動に熱心すぎ、それを逆に訝しがって観に行くことが遅れたことを、公開する次第。
 そして最後に、本作の後悔に尽力されたジェンコさんおよび東京テアトルさんに敬意を表して、この文章を終えたい。